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光学用バンドパスフィルターの選び方を徹底解説!

安達新産業がこっそり教えます。

光学用バンドパスフィルターは、「必要な波長だけを通し、不要な波長を遮断する」ために不可欠なデバイスです。その用途は医療機器、カメラ、通信機器、FAセンサなど多岐にわたり、それぞれ求められる性能も異なります。今回バンドパスフィルターに共通して求められる基本機能に加え、用途別にどんな特性が重視されるのかを詳しく整理しました。フィルター選びで失敗したくない方、開発設計のヒントを得たい方はぜひ参考にしてください。

1.バンドパスフィルターに共通して求められる基本機能

◆中心波長(CWL)の正確な透過
◆必要な帯域のみ高透過率(90%以上が理想)
◆透過帯域外での高い遮断性能
◆入射角依存性の小ささ(角度による波長ズレ抑制)
◆耐久性(温度、湿度、紫外線への耐性)
◆反射防止処理(迷光・ゴーストの抑制)

2.バンドパスフィルターの構造(あくまでも一般的な事例)

バンドパスフィルターは、基本的に多層膜コーティング技術によって作られています。透明な基板(ガラス、石英など)の上に、屈折率の異なる薄膜(例えばSiO₂やTiO₂など)を何十層にも重ねることで、特定波長のみを透過させる性能を持たせています。

基板(Substrate):主に石英、BK7ガラスなど
低屈折率膜(Low Index Layer):SiO₂(酸化ケイ素)など
高屈折率膜(High Index Layer):TiO₂(酸化チタン)、Ta₂O₅(五酸化タンタル)など
多層構成:たとえば「高-低-高-低-…」を数十層積み重ねる
補助層(Optional Layers):反射防止層や耐久性向上層を追加することも。

このような積層構造を設計することで、「透過帯域」と「遮断帯域」を自由にコントロールできるわけです。高性能なバンドパスフィルターほど、膜構成が緻密で高精度になっています。

3.バンドパスフィルターの選び方チェックリスト

✅必要な中心波長(CWL)は?
✅必要な帯域幅(FWHM)は?(ナローかワイドか)
✅遮断帯域の範囲は?
✅使用環境(温度・湿度・光強度)は?
✅入射角は何度で使用するか?(角度依存性に注意)
✅必要な透過率はどれくらいか?
✅表面反射対策は必要か?(特に撮影用途など)
✅サイズや形状の制約はあるか?

こちらのページも併せてご確認ください。

4.【用途別】求められるバンドパスフィルターの特性

医療機器用(内視鏡、蛍光検査など)

・高精度な波長制御が必要(ナローバンド幅フィルターが主流)
・生体組織に対する安全性が重視される(紫外領域使用時は特に注意)
・環境耐性(体温や湿気への耐性)が必須
・長時間使用でも性能が劣化しない耐久性

カメラ・撮影機器用(産業カメラ、天体観測など)

・画質重視のため、透過率と反射防止性能が重要
・入射角依存性が少ないフィルターが好まれる(広角レンズ対応)
・複数の波長を選択的に通すマルチバンドパスも需要あり

通信機器用(光ファイバー通信、LiDARなど)

・波長精度と安定性が最重要(通信波長:例えば1310nmや1550nm)
・高温環境や衝撃への耐性も求められる
・小型軽量化のため、フィルター自体も薄型が好ましい

分析・測定装置用(分光分析器、ラマン分光など)

・超ナローバンド幅(1~10nm幅など)が必要なケースも
・透過帯の平坦性と、遮断帯の急峻な立ち上がりが求められる
・スペクトルの歪みを抑えるため、超高精度の多層膜設計が必要

FAセンサ用

・特定波長の高精度な透過 中心波長の精度が非常に重要。
・高い遮断性能 外乱光(蛍光灯、太陽光など)をしっかりカットする必要あり。
・高透過率と信号強度の維持 低透過率では検出感度が不足し、不良品の見逃しに直結。
・入射角耐性 角度依存性の少ない設計が重要。
・耐久性と信頼性 油煙、粉塵、高温などの工場環境に耐えるハードコーティング仕様が推奨される。
・コストと量産性 当社にとっては・・一番悩ましい。

まとめ

バンドパスフィルターには、「通したい光を正確に通す」「不要な光を確実にカットする」という基本機能に加え、用途ごとに異なる細かな要求特性が求められます。医療・撮影・通信・分析・FAセンサ、それぞれの現場で最適なフィルターを選ぶことが機器性能の向上にも直結します。用途に合わせた最適なフィルター選定を、ぜひ意識してみてください。メールでも電話でもすぐにお答えしますので、お気軽にお問い合わせください。