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エレクトロマイグレーションに対するシリコーン保護の可能性

耐熱性・柔軟性・絶縁性に優れたモメンティブ製品をご提案します。

電子機器の微細化・高性能化が進む中、エレクトロマイグレーション(EM)は、金属配線の信頼性を左右する重要課題となっています。従来は材料選定や配線形状の最適化が中心的な対策でしたが、近年では外部環境からの影響を遮断する絶縁保護膜(コーティング)の役割も注目されています。特に、シリコーン系コンフォーマルコーティング剤は、耐熱性・柔軟性・絶縁性に優れており、エレクトロマイグレーションの進行を間接的に抑制する可能性があります。

私たちは、モメンティブ社のコンフォーマルコーティング剤正規特約店として、エレクトロマイグレーション対策の観点からその適用可能性を提案しています。メカニズムを踏まえたうえで、シリコーンによる保護の有効性について詳しく解説します。

【1】エレクトロマイグレーションと外部環境の関係

エレクトロマイグレーションは、主に「電子風力」と「原子拡散」により進行しますが、その速度は温度・湿度・外部応力などの環境要因にも影響されます。特に以下のような外乱が、配線の劣化を加速させることが知られています。

・熱サイクルや突発的な温度上昇による局所的なストレス

・大気中の湿気や化学物質による金属酸化

・基板や封止樹脂からの応力による微細配線の変形

これらは、金属配線自体に直接触れない構造でも、パッシベーション層や封止材の信頼性が低い場合に影響が表面化します。

【2】シリコーンを活用したエレクトロマイグレーション対策の可能性

①環境保護層としての役割

  • 湿度や酸化からの保護
    シリコーンは高い耐湿性と耐熱性を持つため、配線を湿気や酸化から守ります。これにより、外部要因による配線の劣化が抑えられ、間接的にエレクトロマイグレーションへの影響を軽減します。

  • 物理的ストレスの緩和
    配線が動作中に受ける機械的な応力や熱膨張を吸収することで、材料の安定性を高めます。

封止材としての使用

  • シリコーン系の封止材を使用することで、配線やデバイス全体を保護し、配線内の不純物の拡散や外部汚染のリスクを低減します。不純物はエレクトロマイグレーションの促進因子となるため、封止材の使用は有効です。

【3】シリコーンコーティングの効果とメカニズム

シリコーン系コンフォーマルコーティング剤は、以下の特長によって、EM進行の間接的抑制に寄与します。

■ 耐湿・絶縁性に優れた ECC-3051S の特長

ECC-3051S は、モメンティブ社製の低粘度・RTV(室温硬化型)コンフォーマルコーティング剤であり、優れた防湿性・絶縁性・耐熱性を兼ね備えています。エレクトロマイグレーションの進行を促進する外部要因――特に湿度やイオン汚染――の遮断に有効であり、電子部品表面への長期安定な保護膜形成が可能です。

■ 柔軟性と膜形成性

ECC-3051S は硬化後も弾性を保つ柔軟性の高い膜を形成し、熱ストレスや基板変形に追従可能です。また、スプレーやディップなど多様な塗布方法に対応し、複雑な形状の部品にも均一なコーティングが可能です。

【4】エレクトロマイグレーションを直接防ぐための他の対応策

エレクトロマイグレーションを直接防ぐためには、以下のような配線や材料の工夫が必要です。

①配線材料の改善

  • 銅やコバルト合金など、高エレクトロマイグレーション耐性を持つ材料を使用。
  • 微量の不純物を添加(ドーピング)して、原子移動を抑制。

②配線設計の最適化

  • 配線幅や厚みを増やして電流密度を低下させる。
  • 配線間の距離を調整し、熱や電流の集中を避ける。

③保護膜の追加

  • 配線表面にTa(タンタル)やTiN(窒化チタン)などの耐久性のある保護層を形成。
  • スパッタリング技術による高品質薄膜の利用。

【5】モメンティブ製品の応用例と代理店としての取り組み

当社では、モメンティブ社のRTVシリーズを中心に、下記のようなリスク対策用途での提案を行っています。

■ ECC-3051S の主な適用分野

・BGA や SiP の実装部におけるエレクトロマイグレーション保護
・MEMS デバイスへの湿気・粉塵対策コーティング
・車載用 ECU や産業用制御基板への絶縁信頼性の強化

■ 特約店としての取り組み

当社では、ECC-3051S の導入に向けて、下記内容を積極的に展開しています。

・塗布・硬化条件の最適化支援
・試験チップとの併用評価支援
・既存コーティング剤からの置換に向けた技術提案

まとめ

シリコーンは直接的にエレクトロマイグレーションを防ぐ材料ではありませんが、保護層や封止材として利用することで、外部要因による間接的な影響を軽減する可能性があります。一方、エレクトロマイグレーションそのものを防ぐためには、配線材料や設計の工夫が不可欠です。シリコーンの活用は、包括的な信頼性向上対策の一部として有効と推察します。モメンティブの高機能シリコーン製品と、当社の提案力を掛け合わせることで、現場目線のエレクトロマイグレーションのリスク軽減に関するご提案を提供してまいります。

モメンティブ製コンフォーマルコーティング剤はこちらのページに記載ありますので併せてご覧ください。