5分でわかる!金属ミラーの徹底比較!
金属ミラー材料の比較と選定ポイントを教えます!
光学部品の中でも金属ミラーは、「広帯域で安定した反射性能」「入射角に対する特性変化の少なさ」「優れた耐久性」といった特徴を持ち、装置の信頼性を左右する重要な要素です。可視光はもちろん、赤外(IR)、さらには紫外(UV)領域までカバーできるため、基礎研究から産業用途まで幅広く採用されています。
具体的には、精密光学機器、分析測定装置、医療機器、各種検査装置、FA(ファクトリーオートメーション)分野のセンシング系、さらにはレーザー加工機や光通信関連など、光を扱うあらゆる現場で利用されています。それぞれの装置が求める波長域・反射率・環境耐性は異なるため、「どの金属ミラーを選ぶか」が装置の性能を大きく左右します。
今回は、代表的な金属ミラーの種類とその特長を徹底比較し、用途や目的に応じた選定ポイントを分かりやすく整理します。「どの金属が自分の装置に最適なのか?」と迷われている方の参考になる内容をお届けします。

1.金属ミラーの仕組みと代表的な成膜材料
金属ミラーは、ガラス・石英・シリコン・サファイアなどの光学基板の表面に金属薄膜を成膜して作られる反射光学素子です。金属薄膜は数十nm〜数百nmほどの非常に薄い層であり、この金属層が入射光を効率良く反射する役割を担っています。成膜方法としては、スパッタリングや真空蒸着など、膜質の安定性と密着性を確保できる薄膜技術が一般的に用いられます。使用される金属は主に以下の通りです。
✅Al(アルミ):広帯域で平均的に高反射、コスト性能に優れる
✅Ag(銀):可視光域で最高レベルの反射率を持つ
✅Au(黄金):赤外域で高反射、耐環境性に非常に優れる
これらの金属は、それぞれ反射率のピーク波長域、酸化や腐食のしやすさ、コスト、加工性が大きく異なるため、装置の要求性能に応じた適切な選択が不可欠です。例えば、可視光を強く反射させる検査装置には銀ミラーが向いていますが、銀は非常に酸化しやすいため保護膜が必要です。一方、赤外光を扱う分析機器では金ミラーが一般的で、化学的に安定しているため長寿命というメリットがあります。さらに、汎用的な用途やコスト重視の装置ではアルミミラーが広く採用されます。
このように、「一番反射率が高い金属=最適」ではなく、使用波長・環境条件・コスト・必要寿命など複数の観点から比較することが重要です。安達新産業株式会社では、これらの金属特性と構造設計を踏まえ、目的に最適なミラー仕様をご提案しています。
2.主要金属ミラーの評価項目
金属ミラーは使用する金属によって光学特性・耐環境性・膜質の安定性が大きく異なります。ここでは、実際の成膜現場でも頻繁に採用される代表的な金属について、光学特性だけでなく膜質、加工性、劣化挙動まで踏み込んで比較します。まず比較する主な評価項目は以下の通りです。
✅反射率(可視/IR/UVの波長特性)
✅耐環境性(酸化、硫化、湿度による変色など)
✅成膜性・加工性(膜質の安定性、密着性、保護膜の必要性)
✅コスト(材料費・成膜プロセスの難易度)
✅用途例(推奨される光源・装置)
これらの評価項目を踏まえたうえで、次に代表的な金属材料それぞれが持つ特性を詳しく見ていきます。金属ごとの光学応答や膜質の特徴、耐久性の違いを理解することで、用途に最適なミラー選定がより明確になります。
3.アルミミラー(Al)
◼︎ 特徴
アルミ(Al)は、光学薄膜分野において最も汎用的に使用される金属材料であり、成膜時の安定性・膜質の均一性・コストバランスの良さが突出しています。Alは金属の中でも自由電子密度が高く、可視~近赤外にかけて約88〜92%の反射率を維持します。反射特性が波長全体で比較的フラットで、特定波長に強い癖がないことから、多様な光学設計に適合しやすいのが特徴です。
一方で、Alは大気中で数nmほどの自然酸化膜(Al₂O₃)を成膜後に即座に形成します。この酸化膜は保護層として働く反面、紫外(UV)領域では吸収が増えて反射率が低下する原因になります。そのため、UV用途でAlミラーを使用する場合は膜厚設計の工夫や別材料の検討が必要です。
成膜プロセスでは、スパッタリング・蒸着のどちらでも平滑かつ密着性の高い膜を形成しやすく、量産性に優れる点が大きな利点です。膜質安定性が高く、基板材質の選択幅も広いため、光学部品としての取り回しもよい素材です。
耐環境性という観点では、Alは酸化皮膜によってある程度自己保護されますが、長期的な湿度環境や高温下では反射面劣化が進行する可能性があります。そこで、SiO₂、MgF₂、Al₂O₃ などの誘電体保護膜を追加することで耐久性を大幅に向上できます。
◼︎ 向いている用途
✅カメラ・プロジェクターなどの一般反射光学系
✅光学モジュール・光源ユニット
✅FAセンサー、計測装置
✅可視〜IRを広く扱う汎用光学系
◼︎ 技術的観点からのポイント
👉成膜プロセスが安定し、均一膜・高密着膜を得やすい
👉光学特性がフラットで扱いやすい
👉保護膜で耐環境性を高めることが容易
👉コストと性能のバランスが最も良い万能型金属
4.銀ミラー(Ag)
◼︎ 特徴
銀(Ag)は、すべての金属の中でもっとも可視光反射率が高い素材であり、400〜700 nm付近で97〜99%という最高クラスの反射率を誇ります。これはAgの自由電子密度が非常に高く、可視光領域での吸収が極めて小さいためで、光量損失を最小限に抑える精密光学系では非常に大きな優位性となります。近赤外〜中赤外(IR/MIR)においても反射率は高く維持されるため、高効率の反射が求められる光学系には最も適した金属として扱われています。
一方で、Agの最大の課題は環境劣化に対する脆弱性です。Agは硫化物(Ag₂S)や酸化物(Ag₂O)として表面が容易に変質するため、「硫黄成分を含む環境、湿度が高い環境、温度変動の大きい環境」では急速に反射率が低下することがあります。特に硫化による劣化は短期間で発生し、保護膜なしでは安定使用が困難です。
そのため、光学用途のAgミラーでは、SiO₂、Al₂O₃、TiO₂等の多層保護膜コーティングが必須となります。表面を完全に外気から遮断する構造を設計することで寿命を大幅に延ばすことができます。また、Ag膜は基板前処理の影響を受けやすく、密着性確保のためには適切な膜成長条件や界面制御が重要となります。
◼︎ 向いている用途
✅画像検査装置(光量ロスを極小化したい)
✅高輝度照明、投影・プロジェクション用途
✅可視〜近赤外の精密光学系
✅高い反射効率を必要とするセンシング系
◼︎ 技術的観点からのポイント
👉可視光反射率は金属中トップ
👉保護膜設計が寿命を左右するため膜構成が極めて重要
👉光学特性が優れる反面、環境劣化に最も注意が必要
👉光量性能を最大化する装置に最適
5.金ミラー(Au)
◼︎ 特徴
金(Au)は、赤外〜中赤外(IR/MIR)領域で非常に高い反射率(95%以上)を示す金属で、IR光学系の標準材料として広く採用されています。Auの特長は、他の金属と比較して化学的安定性が桁違いに高い点にあります。大気中でも酸化せず、硫化や湿度による劣化もほぼ受けないため、長期間にわたって反射率を安定維持できます。
可視光においては、金特有のd電子吸収帯の影響により黄色味のある反射特性を示し、反射率はAgやAlに比べてやや劣ります。そのため、可視を主体とした用途よりも、IR領域で最高の特性を発揮する金属と言えます。成膜技術の観点では、Auは膜密着性にやや課題があり、Siやガラスなどの基板には密着しにくい場合があります。そのため、Ti、Cr、Niなどのアンダーコート(金属密着層)を併用することで安定した膜形成が可能になります。多くのIR光学用途では「密着層+Au」の2層構造が標準となっています。
また、Auは膜応力が比較的穏やかで膜質安定性が高く、IR用ミラーとして長期間の信頼性を確保しやすい金属です。宇宙環境・高湿度・高温などの過酷条件でも劣化が少ないため、高信頼性を要求する装置に適しています。
◼︎ 向いている用途
✅FTIR、赤外分光器(標準反射面)
✅IRカメラ、熱画像装置
✅医療・分析装置の赤外光路
✅宇宙機器・屋外機器(腐食に対して圧倒的有利)
✅長寿命が求められる精密光学モジュール
◼︎ 技術的観点からのポイント
👉IR領域における反射率の高さと安定性はトップクラス
👉環境耐性が圧倒的に高く、長寿命が期待できる
👉密着層を含めた膜構造設計が性能の決め手
👉可視光では銀に劣るため、使用波長帯の明確化が重要
6.アルミ増反射ミラー(Al Enhanced Mirror)
◼︎ 特徴
アルミ増反射ミラー(Enhanced Aluminum Mirror)は、アルミ(Al)基材の反射率を誘電体多層膜によって強化したミラーで、可視〜近赤外(VIS–NIR)において通常のAlミラーを大きく上回る反射率(95〜98%)を実現できます。ベースとなるAl膜は、自由電子による反射が強く膜成長も安定していますが、可視域ではAl₂O₃による吸収・散乱で反射率がやや低下する傾向があります。そこで、Al膜上に SiO₂などの誘電体多層膜を設計することで、
✅干渉効果による反射率増強
✅酸化・湿度に対する保護膜としての機能
✅波長特化の最適化(可視/赤系統など)
が同時に実現できます。増反射設計にもバリエーションがあり、
✅高耐久タイプ(IRまで伸ばした広帯域強化)
✅可視域に最適化した狭帯域強化タイプ
✅照明波長(例:550 nm 近傍)にピークを合わせた特化型
など、膜構造により性能が大きく変化します。反射率増強だけでなく、環境耐久性の向上が大きな利点で、標準Alよりも湿度・温度・薬品に対して強い長寿命ミラーを構成できます。
◼︎ 向いている用途
✅可視〜近赤外の高効率反射光学系:プロジェクター、照明、画像処理光学系
✅銀ミラーを使いたいが耐久性に懸念がある環境:湿度が高い設備・屋外系の光学装置
✅コストと性能のバランスが重要な装置:FAセンサ、一般工業向け光学モジュール
✅広帯域反射を必要とする汎用光学系:レーザーモジュール、各種分析機器
◼︎ 技術的観点からのポイント
① 誘電体多層膜設計が性能を左右
膜厚精度が性能に強く影響するため、スパッタリングや高精度蒸着による膜厚制御が重要です。特に、干渉構造が整っていないと反射率が十分に上がらず、また波長依存性が強く出るため、用途波長への最適化が必須です。
② 銀ミラーとの比較優位性について
👉反射率:銀>増反射Al(ごく僅差)
👉耐久性:増反射Al>銀(圧倒的に優位)
👉コスト:増反射Alは銀より安価で安定
結果として 「銀ミラーの光学性能+優れた耐久性+手頃なコスト」 が評価ポイントになります。
③ 保護膜としても優秀
多層膜がAlの酸化を抑制するため、標準Alに比べて寿命が大幅に向上します。装置の保守性や交換頻度を抑えたい産業用途で特にメリットが大きいです。
④ 広帯域設計にも対応
誘電体多層による制御で、可視・NIR・赤系統など、用途に応じてスペクトル形状を自由に調整できます。反射率最大化だけでなく、波長特性をチューニングする「光学設計の自由度」が高い点も魅力です。
7.用途別おすすめ金属ミラー(技術的背景を踏まえた選択ガイド)
金属ミラーの選定では、波長帯域・反射率・耐環境性・熱特性・膜構造の最適化など複数の変数が絡むため、単純な「反射率の高さ」だけでは最適解になりません。以下では、それぞれの用途に応じて“なぜその金属が適するのか”を技術的理由とともに示します。
👉可視光の高反射が最重要 → 銀ミラー(Ag)
可視域(400–700 nm)における銀は、金属中で最も無損失に近い光学応答を示し、反射率97〜99%を実現します。これは自由電子密度の高さと、可視域における低い吸収係数によるものです。
◆高輝度照明の反射効率を最大化
◆画像処理・検査装置など、光量ロスが致命的な装置で最適
◆プロジェクターの光学エンジンなど、色再現性が重要な用途でも優秀
ただし、Agは硫化・酸化による急激な劣化が最も大きなデメリットであり、実用上は 多層保護膜(SiO₂ など) が不可欠です。
👉赤外光を扱う → 金ミラー(Au) or アルミミラー(Al)
赤外〜中赤外(IR〜MIR)領域では金属の光学特性が大きく変化します。
金ミラー(Au)
👉MIR領域(3–12 µm)で95%以上の高反射
👉電子吸収が可視域には影響するがIRでは消失 → 非常にフラットな反射率
👉化学的安定性が極めて高く、長期信頼性が重要なIR分光・FTIRに最適
特にMIRの分野では「事実上の標準金属ミラー」とされています。
アルミミラー(Al)、アルミ増反射ミラー
👉VIS〜NIR(400–1500 nm)では88〜92%の高反射
👉広帯域対応、膜質安定、量産しやすい
👉自然酸化膜により耐環境性がそこそこ高い
近赤外中心の装置、FA系光学、一般工業向け光学系ではAlが採用されるケースが多いです。
● 汎用・コスト重視 → アルミミラー(Al)、アルミ増反射ミラー
👉成膜安定性が高く、均一膜を量産しやすい
👉可視〜近赤外で十分に高い反射特性
👉比較的コストが低い
👉実装環境での湿度による劣化も比較的少ない
「迷ったらAl」という評価は技術的にも妥当で、FAセンサや工業検査機器など、装置の標準部品として最も採用例の多い金属です。
8. 安達新産業が提供できる付加価値(技術+提案力)
安達新産業では、単なる成膜サービスではなく、光学特性・耐環境性・装置要求に合わせた“最適な金属ミラー設計”を一括でサポートしています。
1)スパッタリング・蒸着による高品質金属膜成膜
✅Al/Ag/Au/Cu/Cr などの金属膜に対応
✅負荷電圧・膜成長条件を制御し、低粗さ・高密着の膜質を実現
✅ミラー用途に求められる**平滑性(低散乱)**に着目したプロセス設計が可能
2)基板選定まで含めた光学設計サポート
ガラスだけでなく、Si、サファイア、石英など、装置の温度条件・レーザー強度・IR透過要求に応じて最適な基板を提案します。
3)膜厚最適化・多層保護膜の設計
金属膜単体では性能が出ない場合、用途に応じて以下を最適化します。
✅SiO₂ などの 単層保護膜
✅TiO₂・HfO₂ などの 多層干渉膜による増反射設計
✅銀ミラーの 耐湿多層保護構造
✅ゴースト・角度依存性を抑えた トータル薄膜設計
装置の波長、角度、入射強度、環境耐久条件(温湿度・薬品)まで考慮して最適な膜構造を構築します。
4)カスタム形状/小ロット対応プレビュー (新しいタブで開く)
👉数枚〜中ロットまで柔軟に対応
👉特殊形状・開口・スリット・小型部品も対応可能
👉装置向けの置換部品として一品対応も可能
安達新産業は試作→評価→量産をシームレスに繋げる体制を持っているため、研究用途から量産装置まで幅広いご相談に対応しています。
5)用途が未確定の段階でもOK
「どの金属が最適かわからない」という段階でもお気軽にご相談ください。
用途の波長・角度・入射強度・サイズなどから、最適な反射鏡を営業がしっかり選定します。波長帯域、入射角、ビームサイズ、装置の温度/湿度条件、必要寿命、コスト要求などをヒアリングし、営業部門と東大阪工場が協働して最適な金属ミラーを提案します。