匠の赤外線

LPF(ロングパスフィルター)
赤外線ロングパスフィルター 波長:850nm〜
- 可視光は透過せずに、赤外域の波長は透過させたいが可能ですか?
- 製品に実装した際、角度や偏光によって透過率やカット特性が変化することへの懸念。
- データシート上のスペックと実機の性能が一致するか、量産時に安定するかが心配。
- 装置構造やスペース、基板材質(ガラス/樹脂など)により、厚みや形状に制約がある。
- 高性能を追求すると価格が高騰し、予算内で最適解を見つけにくい。
解決!「赤外線ロングパスフィルター 波長:850nm〜」のチャート

匠のポイント
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高性能を支えるキーテクノロジー:850nmロングパスフィルターに求められる技術性能
850nmロングパスフィルター(LPF)は、主に近赤外(NIR)波長帯での光学系やセンシング用途に用いられる光学部品です。ロングパスフィルターは指定波長よりも長い波長を透過させ、それより短い波長を反射または吸収する多層膜光学素子であり、以下のような高度な技術性能が必要とされます。
✅高い透過率(透過帯域での性能)
透過開始波長より長波長側での透過率は>90%以上が理想です。特にNIRカメラや照明系での使用では、低損失かつ均一な透過が必須です。✅急峻なカットオフ特性
カットオフ波長(850nm)近傍での透過率の立ち上がりは、できる限り急峻であることが望まれます。これにより不要な短波長光を効果的に除去できます。✅広い遮断帯域と高い遮断特性
カットオフ波長より短い波長側での遮断性能は、センサーへの迷光や外乱光低減に重要です。✅角度特性の最適化
実装時には光が斜めに入射する場合が多いため、設計波長における性能が入射角変化に強く、偏光依存性を抑える設計が求められます。✅耐環境性と耐久性
多層膜の剥離や性能変動を防ぐため、湿度・温度変化に対する耐性が重要です。特に樹脂基板や高温環境下で使用される場合にはコーティングの密着性や材質選定も肝心です。✅高精度なカットオフ波長設定
フィルターの設計波長が±数nmの精度で設計・製造される必要があります。製造ロット間でのバラツキを抑える高度な成膜プロセス技術も不可欠です。 -
美容用途における850nmロングパスフィルターの活用例と技術的意義
✅近赤外光を利用した皮膚観察(スキンアナライザー)
850nm帯の近赤外光は皮膚の浅層から中層に浸透しやすく、血管やメラニン、コラーゲン分布などの観察に適しています。ロングパスフィルターを使うことで、可視光をカットしてNIR波長帯の信号のみを選択的に透過。これにより、外光や照明の映り込みなどのノイズを低減し、肌内部構造を鮮明に可視化できます。✅光治療・美容機器(例:フォトフェイシャル、LED美顔器)
美容機器では、LEDやレーザーの近赤外波長(800〜900nm付近)を利用して血行促進や皮膚細胞の活性化を狙います。このとき、ロングパスフィルターにより、皮膚に届く波長を850nm以上に限定し、不要な短波長の可視光による刺激や発熱を抑えます。特に肌への優しさや照射エネルギーの最適化に寄与します。✅肌トラブル診断装置
850nmを超える波長は、皮脂やメラニン量の推定、シミ・くすみの検出に活用。ロングパスフィルターにより特定波長を透過させることで、診断結果の再現性と信頼性を向上させます。 -
ご要望の波長帯での設計・カスタマイズが可能
お客様のご要望の波長領域に合わせた設計・成膜(コーティング)が可能です。透過域のみならず、阻止域での制御や入射角も重要な要素です。基板の特性並びにお客様の要望に合わせた設計を行いますので、お問い合わせ時に、基板種や波長帯をお伝え下さい。
ロングパスフィルターの性能を最大限に引き出すためには、基板材質や構造に応じた最適な成膜設計が欠かせません。当社では、ガラス・石英・サファイアなど多様な基板に対応し、それぞれの熱膨張係数や表面特性を考慮した薄膜設計を行っております。
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部品形状対応も可能
基板調達から成膜までの一貫対応に加え、ご要望の形状へのカット・部品化にも対応可能です。形状指定の場合は、詳細図面のご提供をお願いしております。
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万全の品質保証体制
成膜から検査・梱包まで、すべての工程を必要なクリーン度を維持したクリーンルーム内で実施。膜中異物や微少欠陥への対策も万全です。すべての製品に対し、分光特性チャートを添付して出荷いたしますので、安心してご利用いただけます。
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安全・安心な製品設計
当社では、人体や環境に有害な物質は一切使用しておりません。安全性にも配慮した製品設計を徹底しております。カスタム設計のバンドパスフィルターに関するご相談は、ぜひ安達新産業へ。長年の経験と実績を活かし、最適なソリューションをご提案いたします。
用途例と今後の展望
- 用途例
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🟦近赤外カメラ/センシング
IR LEDやVCSELなどの光源波長(850nm〜940nmなど)を透過させ、可視光をカットしてノイズを抑制。🟦顔認証・虹彩認証
人間の目に見えにくいNIR光で撮影し、自然光の影響を低減。🟦ロボット・AGV・LiDAR
外光の影響を低減し、850nm帯の反射光や発光を正確に検出。🟦医療機器・診断装置
血管や組織内部を近赤外光でイメージング。🟦製造検査・品質管理
近赤外光を用いた異物検査や内部欠陥の検出など。 - 今後の展望
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🟦AR/VR向け小型化・軽量化
薄型基板・プラスチック基板へのコーティング技術で、次世代ヘッドセットやメタバース機器への応用。🟦環境耐性強化
耐熱・耐湿・耐紫外線コーティングの高度化で、屋外用途や過酷環境下への適用拡大。🟦角度・偏光依存性の低減
特殊設計によるワイドバンド&広視野角性能の向上。🟦より急峻なカットオフ・高遮断特性
センサーの高感度化・小型化に対応するため、干渉膜設計・成膜制御技術の進化。
850nmロングパスフィルターは、可視光を遮断し近赤外光のみを効率的に透過させることで、高精度センシングや映像処理を支える重要な光学部品です。性能要件は単純な「透過・遮断」だけでなく、角度依存性、耐久性、量産性など多岐にわたります。今後は、センシング技術やAR/VR、医療・産業用途の進化とともに、フィルターにもさらなる高性能化・多機能化が期待されています。
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