匠の赤外線
AR(反射防止膜)
アロニックスシートへのITO/近赤外ARコート
- 赤外センサ部材としての“総合設計の難しさ”
- ITO単体の近赤外特性の限界がある・・吸収の考慮
- ITOの低抵抗化とIR波長帯の高透過の両立をさせること
- 赤外線領域の透過率や反射率の測定環境を持っていない。
- AR膜の耐久性・耐擦傷性・環境耐性への不安(そもそもアクリルに密着する?)
解決!「アロニックスシートへのITO/近赤外ARコート」のチャート
匠のポイント
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剛性を有する樹脂光学部材に、導電性と近赤外光学特性を同時付与する技術
近年、車載LiDARや各種赤外センサの普及に伴い、905nm帯域における高透過率と低反射率を両立した光学部材への要求が急速に高まっています。特にToF方式やパルスレーザーを用いるセンシングでは、わずかな反射損失や散乱が検出精度に直結するため、波長特化型の光学設計が不可欠です。
一方、これらのセンサを外部環境から保護するカバー材には、機械的強度および耐衝撃性、温度変化に対する寸法安定性、加工性および量産適性といった樹脂材料特有の特長が求められ、光学特性と機械特性の両立が設計上の大きな課題となっています。
安達新産業では、東亞合成株式会社のアクリル系樹脂材料「アロニックスシート」に下記を組み合わせた複合薄膜プロセスを確立しました。
✨真空蒸着によるITO(透明導電膜)形成
✨905nm帯域に最適化した反射防止(AR)コーティング設計有機基材特有の課題である「アウトガス由来の膜質劣化」「低耐熱性によるプロセス制約」「表面エネルギーの低さに起因する密着性課題」に対し、成膜条件の最適化および密着層設計を行うことで、高い密着性と安定した光学特性を両立しています。
さらに、ITO膜については膜厚・キャリア濃度の最適化により、導電性(135Ω/□)を確保しながらも905nm帯域における吸収損失を抑制し、その上に設計したAR多層膜との組み合わせにより、近赤外域での高透過化と低反射化を同時に実現しました。
これにより、従来は個別部材で対応していた✅帯電防止機能(ITO) ✅光学損失低減(AR) ✅保護機能(樹脂基材)を一体化し、剛性を有する樹脂光学部材における機能統合設計を可能としています。
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なぜ「アロニックスシート」にITOとARが必要なのか?
アロニックスシートは、耐久性・透明性・軽量性に優れるアクリル系樹脂材料であり、光学カバー用途に適した基材です。一方で、赤外センサ用途、特に905nm帯域を用いるセンシングにおいては、電気的・光学的機能の不足が顕在化します。これらの課題に対し、ITOを付与することで機能補完が可能となります。
✅表面帯電による光学・電気的影響
アクリル系樹脂は体積抵抗率が極めて高い絶縁体であり、外部環境との摩擦や気流により容易に帯電します。この帯電は単なる静電気問題に留まらず、赤外センサに対して以下のような影響を与えます。
・空中浮遊粒子の静電吸着による透過率低下および散乱増加
・センサ周辺回路への静電誘導によるノイズ混入・誤検知
・表面電位分布の不均一化による光路の安定性低下ITOを成膜することで、表面に低シート抵抗の導電層を形成し、電荷を速やかに拡散・放電させることが可能となります。これにより、帯電起因の光学ノイズおよび環境依存性を大幅に低減できます。
✅近赤外域における光学機能の不足
アクリル単体の屈折率(n≈1.49前後)と空気界面との不連続により、905nm帯域においてもフレネル反射が発生します。この反射は片面あたり数%に達し、往復光路を考慮するとセンサ受光量に対して無視できない損失となります。また、アクリル基材は基本的に波長選択性を持たないため、不要波長の透過や迷光の影響を受けやすいという課題もあります。ITO層の光学定数を考慮した上で、905nm近傍に最適化した多層AR設計を適用することで、界面反射の最小化や、光路内での多重反射抑制を実現し、近赤外域における高透過率と低反射特性を両立しています。
✅ITO付与による機能拡張性
ITOは単なる帯電防止膜に留まらず、デバイス設計の自由度を大きく拡張する機能層として機能します。例えば、
🟨通電による発熱を利用した透明ヒーター機能
→効果:結露・霜・着氷の防止/車載・屋外用途での視界確保
🟨センサ一体型構造における電極・シールド層としての活用
→効果:ノイズ耐性の向上、モジュールの小型化・部品点数削減など、光学部材に電気機能を統合することで、システム全体の信頼性と設計効率の向上が期待されます。
アロニックスシートは優れた機械特性と光学特性を有する一方で、赤外センサ用途に求められる電気的・光学的機能を単体で満たすことは困難です。ITOを付与することで、表面帯電制御(電気機能)、近赤外光学特性の最適化(光学機能)、ヒーター・電極機能の付加(システム機能)を同時に実現し、樹脂光学部材の高機能化・多機能化を可能とします。
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東亞合成「アロニックスシート」とは?
東亞合成株式会社が開発した「アロニックスシート」は、独自の高分子設計により実現した高機能性樹脂シートです。優れた耐熱性や寸法安定性、電気絶縁性を兼ね備え、電子部品や光学分野など、幅広い用途で利用されています。アロニックスシートの大きな特徴のひとつが、「赤外線透過性」です。特に近赤外領域(800〜2500nm)において高い透過率を持つため、以下のような用途に最適です。
🟨IRセンサーや赤外線カメラの窓材
🟨非接触型温度計の光学部材
🟨LiDAR(ライダー)用途における赤外線用カバー
🟨赤外線通信装置の保護パネル樹脂系材料としては非常に優秀であり、ガラスや結晶材料に比べて軽量かつ加工性が高いというメリットを併せ持っています。アロニックスシートの赤外線透過性は、東亞合成の高分子化学技術とシート化技術によって実現しています。樹脂内部の吸収や散乱を抑えつつ、赤外領域での透過率を高めるための配合技術や当社の成膜プロセスが活用されています。これにより、可視光では半透明〜不透明でも、赤外線は高効率で透過させるという特性を得ています。
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部品形状対応も可能
基板調達から成膜までの一貫対応に加え、ご要望の形状へのカット・部品化にも対応可能です。形状指定の場合は、詳細図面のご提供をお願いしております。
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万全の品質保証体制
成膜から検査・梱包まで、すべての工程を必要なクリーン度を維持したクリーンルーム内で実施。膜中異物や微少欠陥への対策も万全です。赤外領域の分光特性測定が可能なFT-IR(フーリエ変換赤外分光光度計)を完備。すべての製品に対し、分光特性チャートを添付して出荷いたしますので、安心してご利用いただけます。
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安全安心な製品設計
当社では、人体や環境に有害な物質は一切使用しておりません。安全性にも配慮した製品設計を徹底しております。カスタム設計の反射防止膜(AR)や透明導電膜(ITO)に関するご相談は、ぜひ安達新産業へ。長年の経験と実績を活かし、最適なソリューションをご提案いたします。
用途例
ITO(透明導電膜)に通電させ、発熱を利用した透明ヒーター機能を付与することで、光学窓としての性能を維持しながら環境耐性を大幅に向上させることが可能です。特に屋外環境下では、温度差や湿度変動により光学面に結露や霜が発生しやすく、これが赤外センサやカメラの検出精度を著しく低下させる要因となります。
- 画像、センシング用途
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🏭監視カメラ・セキュリティ機器
→レンズカバーの曇りを防ぎ、常時クリアな視界を確保。
→画像認識、AI解析制度の維持に寄与🏭産業機器(検査装置・レーザー機器)
→温湿度変動の大きい環境でも光学測定の再現性を確保。
→光路中の水分付着による測定誤差を低減 - 自動車機器用途
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🚚LiDAR
→夜間・降雨・低温環境下でも安定した受光特性を維持
→結露/霜による信号減衰を防止
アクリル系樹脂は、軽量性・加工性・コスト性に優れる一方で、光学機能や導電機能を単体で満たすことは困難です。安達新産業は、ITO透明ヒーターと905nm最適化ARコートを組み合わせることで、単なる保護部材であった樹脂光学窓を、「環境耐性を備えた高機能光学デバイス」へと進化させることが可能です。波長設計(可視~近赤外)、導電膜設計(ITO・金属膜)、密着層・耐環境設計まで含めたトータル提案が可能です。仕様が固まっていない構想段階からでも、ぜひご相談ください。
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