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レチクルを徹底解説します!パターン・メタライズ加工が重要です!

「正確に見る」「正確に合わせる」「正確に測る」精密測定ツールです。

「レチクル」とは・・と聞いて、半導体製造における微細な回路パターンが描かれた原版を思い浮かべる方が多いかもしれません。しかし、レチクルの活躍の場はそれだけにとどまりません。光学機器の精密な部品として、あるいは新たな微細加工技術のキーコンポーネントとして、私たちの身近な様々な場面で重要な役割を果たしています。今回は、半導体分野以外のレチクルの世界に焦点を当て、その語源から多様な用途、安達新産業株式会社での強みを教えます。

【1】レチクルの語源

「レチクル(Reticle)」という言葉は、ラテン語の「reticulum」に由来するとされています。「reticulum」は「小さな網」や「網状のもの」を意味し、これが光学機器の視野内にK線を引いた十字線や目盛りが網のように見える様子を表す言葉として使われるようになりました。

【2】レチクルとは?

半導体分野ではフォトマスクに近い意味を持つ「レチクル」ですが、半導体分野以外では、主に光学機器の焦点面に配置される透明な板を指し、その表面には測定や照準、位置合わせのためのパターンが精密に描かれています。このパターンは、使用目的によってさまざまに設計されており、例えば、スコープや顕微鏡では中心を示す十字線(クロスヘア)、測量器では正確な位置決め用のグリッドや目盛り付きスケールが用いられます。さらに、AR/VR機器やHUD(ヘッドアップディスプレイ)では、視線誘導や補助情報表示のための特殊形状パターンも採用されます。

材質にはガラスや石英、フィルム、アクリルなどが使用され、使用環境に応じて耐熱性・透過性・視認性・耐久性などが求められます。近年では、従来の軍事・測量・光学用途だけでなく、医療や航空、デジタル機器分野にも広がりを見せており、その用途は「正確に見る」「正確に合わせる」「正確に測る」といった行為を支える精密視覚ツールとして進化し続けています。

【3】多様な用途:暮らしを支えるレチクル

◆光学機器

顕微鏡:試料のサイズ測定や特定箇所の指定に、目盛りが付いたレチクル(ミクロメーター)が使用されます。
望遠鏡:天体観測や測量、狩猟用スコープなどで、目標を正確に捉えるための十字線や距離を測るための目盛りが付いたレチクルが使われます。
カメラ:一眼レフカメラのファインダー内に表示されるAFフレームやグリッドなども、一種のレチクルと言えます。

◆測量機器

セオドライトやトランシットといった測量機器で、目標地点を正確に視準するためにレチクルが用いられます。

【4】レチクル製造のキーテクノロジー

レチクルは、極めて高い精度と視認性が要求される部品であり、その製造には微細加工技術と材料制御の両立が欠かせません。単なる印刷や描画では実現できない、サブミクロンレベルのパターン形成や、光学特性を持つ構造作りが必要とされます。ここでは、安達新産業株式会社がレチクル製造において活用している代表的な技術として、「フォトリソグラフィ」と「薄膜蒸着(薄膜形成)」を中心にご紹介します。これらの技術は、用途や材質に応じて最適な形で選定・組み合わせることで、医療から航空宇宙まで多分野のニーズに応える製品を支えています。

◆ フォトリソグラフィ(Photolithography)

フォトリソグラフィは、光を使って微細なパターンを基板上に形成する技術で、半導体製造と同様にレチクル製造にも応用されています。感光性のレジスト(光に反応する樹脂)を塗布した基板に、マスクを通して光を照射することで、パターンを転写。その後、現像・エッチング・洗浄といった工程を経て、サブミクロンレベルのパターンを正確に形成します。

この技術により、クロスヘア、グリッド、スケールマーカーなどの高精度な線や図形を描画することが可能で、顕微鏡観察用・測定用・照準用など、位置決め精度が求められるレチクルの製造に最適です。

◆ 薄膜蒸着(Thin Film Deposition)

金属レチクルでは、アルミニウムやクロムなどの金属薄膜を基板に蒸着し、その後の微細加工によってパターン状に金属線やマーカーを形成します。高い反射性・遮光性・耐久性が求められる用途に特に有効であり、たとえば航空機のHUD(ヘッドアップディスプレイ)や高耐久の測量機器などに適用されます。また、薄膜の厚さや金属種をコントロールすることで、光学特性(透過率・反射率)や耐候性も調整できます。

【5】安達新産業レチクルの強み

用途ごとに異なる仕様や制約条件に応じて、サイズ・形状・パターン設計・光学性能などをお客様と共に設計します。たとえば、医療機器向けには手術視野に適した視認性と透明性の両立設計、建設・測量用途には野外光に強い高コントラスト設計、ゲームやAR用途には極薄・軽量フィルム基板での量産設計など、お客様の業界・製品・装置の特性を踏まえた最適解をご提案が可能です。1枚からの試作検討、用途開発の初期段階から量産フェーズまで、伴走型パートナーとして対応いたします。

◆ ミクロンレベルのパターン加工技術

最小線幅5μmの微細グリッド、複雑な非対称形状、クロスヘア、スケールマーカーなど、あらゆる図形に対応します。高精度なマスク製造技術と自社設計データベースを活かし、視認性と精度を両立したパターン形成が可能です。

◆ ガラス、フィルム、金属、樹脂など多様な素材対応

石英・光学ガラス・PET・PC・アクリル・SUS・アルミなど、さまざまな基材に対して実績多数。製品用途や強度・耐久要件に応じた素材選定もサポートします。

◆ 少量試作から量産対応までフレキシブルにサポート

「まずは1枚から」でも、「年間数千枚」でも柔軟に対応。設計支援 → 試作 → 評価 → 改良 → 量産という一連のフローにおいて、品質とスピードを両立します。

◆ 用途に合わせた完全カスタム対応

業界・装置ごとの要件に応じて、図面・機能・材質・光学特性まですべての提案が可能です。医療、測量、航空、ゲームなど多様な用途での実用化実績をもとに、装置メーカーや開発担当者との共同開発にも多数対応しています。

まとめ

半導体分野以外のレチクルの今後の動向としては、医療やライフサイエンス分野でのマイクロ流路デバイスやバイオセンサーなどの研究開発が進むにつれて、これらのデバイス製造に不可欠な微細パターンを持つレチクルの応用も拡大していくでしょう。半導体分野の目覚ましい発展の影に隠れがちですが、レチクルは光学機器から新たな微細加工技術に至るまで、私たちの社会を様々な形で支えています。今後の技術革新により、さらに多様な分野でのレチクルの活躍が期待されます。是非お気軽に問合せ下さい。