SiC向けTEGチップ について
プロセスの精度や安定性を評価するために不可欠な存在のチップです。
半導体製造において、TEG(Test Element Group)チップはプロセスの精度や安定性を評価するために不可欠な存在です。製造ラインの微細な変動を検知し、歩留まり向上につなげるため、TEGチップ上のメタライズ(配線形成)やパターン加工には極めて高い技術が要求されます。特に、SiCパワーデバイスは高耐圧・高温動作・高周波動作が特徴で、シリコンとは異なる破壊モードや失敗機構(高電界での破壊、界面トラップ、粒界起源の劣化など)を持ちます。そのため、SiCプロセス専用のTEG(Test Element Group)が必要です。TEGは「工程の見える化」として、材料・成膜・パターン加工・エッチング・接合・信頼性評価を定量化するための専用試料群を提供します。文献レビューでも、SiCのプロセス的特徴(Siプロセスとの差異)を踏まえた専用評価が重要とされています※1。
【1】TEGチップとは?-目的と重要性
TEGチップとは、量産品とは別に用意された評価専用のテストチップです。一般的には、配線幅・スペース・コンタクト抵抗・層間絶縁膜の品質などを測定するため、さまざまなテストパターンが高密度に配置されています。これにより、実製品の破壊検査を行うことなく、プロセス条件の最適化や異常検出が可能になります。量産デバイスを直接評価することは、コスト面・破壊リスクの面から現実的ではありません。そのため、プロセス評価専用として、設計・測定がしやすい形で各種テスト構造を集約したTEGチップが製造されるのです。
✅配線幅・スペースの寸法精度
✅コンパニオン抵抗(線幅と直結)
✅積層構造間の絶縁性能
✅エレクトロマイグレーション耐性(信頼性試験)
量産チップを破壊せずにプロセス状態を正確に把握できるため、歩留まり向上と早期異常検出のカギとなっています。
【2】SiC加工上の主要技術課題(TEG作製時の注意点)
SiC特有の加工上の難しさがTEG設計/製造にも直接影響します。
①基板硬度・脆さとウエハ処理
SiCは硬くて脆く、ウエハの研磨・スライス・スクライブでのひび割れやチップ欠損に注意が必要です。TEGの小セルを多数配置する際はダイシング、スクライブ処理の影響を考慮する必要があります。
②エピタキシャル層の厚さとドーピング
電界分布や耐圧はエピ厚・ドーピングで大きく変わるため、TEGには複数エピ条件を含めておくと有用です。当然ですが、お客様ごとに異なるため、その条件が付加価値となります。
③接触(金属)形成とオーミック接触の再現性
SiCでは低抵抗オーミック接触を得るためにNiやTiベースのメタル/高温アニールが必要です。また、膜構成・アニールプロファイルが抵抗値に直結します。
④ゲート酸化技術と界面品質
Siと比べてSiCの酸化界面はトラップが多く、熱酸化や窒化処理を含む複数変数テストをTEGで評価することが必須です。
⑤熱管理(高温測定)
SiCは高温動作評価が意味を持つため、TEG評価用に高温測定プローブ、熱サイクル設備を整備する必要があります。これらは設計段階でTEGに反映させないと、実際の量産評価で「測りたいことが測定できない」失敗につながります。例えば、ヤマト科学様製品TE100などがございます。
【3】メタライズ技術
TEGチップのメタライズは、量産チップ以上に正確な膜厚管理と低ダメージな成膜が求められます。主なプロセスには以下のものがあります。
✅スパッタリング
高密度プラズマを利用してターゲット材をチップ表面に成膜します。銅(Cu)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)などが代表的な材料です。
✅蒸着(E-beam蒸着)
より高純度な金属薄膜が要求される場合に使用されます。
重要なのは、単なる膜厚だけでなく、膜の結晶性や内部応力、密着性まで精密に管理することです。これにより、パターン加工後の寸法安定性や信頼性に直結します。
【4】パターン加工技術
TEGチップに形成されるパターンは、量産品以上に微細・高精度な場合が多く、加工工程にも特別な注意が必要です。
✅フォトリソグラフィ
ミクロンレベルの露光・現像技術が必須。特に線幅制御が重要視されます。
✅エッチング
エッチング時の側壁形状や寸法変動にも細心の注意が払われます。
✅リフトオフ
パターンが極端に細い場合や、エッチングダメージを避けたい場合にはリフトオフプロセスが使われます。スパッタリングとの組み合わせが多いです。
【5】SiCデバイス技術と市場のクロスインパクト
SiCデバイスは、高温・高電圧・高信頼性動作を前提とするため、TEGチップの設計にも特有の要件が求められます。たとえば、温度依存特性を考慮した抵抗測定セル、高電界下での絶縁破壊試験構造、長期ストレス試験用配線などが不可欠です。これらの構造は、安達新産業が培ってきた精密メタライズ技術・パターン加工技術により高再現性で形成することが可能です。
一方で市場面では、SiCデバイスの急速な量産化に伴い、プロセス開発・評価支援型のTEGサービスが新たなビジネス領域として注目されています。単なる設計提供にとどまらず、加工・評価・解析・フィードバックまで一体化したエンジニアリングサービスが求められており、特に以下の領域で強い需要が見込まれると予想しています。
・エピタキシャル層の特性評価とプロセス最適化支援
・オーミック接触・バリアメタル形成の評価
・高温信頼性試験用構造の試作
・大面積ウェーハに対応したTEG設計サービス(大面積の対応が当社では現状難しいです)。
まとめ
SiCの普及は、パワーデバイス市場の構造を大きく変えつつあり、それに伴ってプロセスモニタリングと信頼性評価の重要性が飛躍的に高まっています。TEGチップはその中心的なツールとして、製造工程の可視化・品質安定化・技術開発加速に直結しています。安達新産業では、SiC基板向けのメタライズ、微細パターン形成、電気特性測定用構造の一貫加工を通じ、SiCデバイスメーカーの研究開発および量産立ち上げを支援しています。技術と市場の両面から見ても、SiC向けTEGチップは今後の半導体産業を支える重要なインフラとなっていくでしょう。
また、TEGチップは、プロセス開発や量産モニタリングを支える重要なツールです。その性能を最大限に引き出すためには、メタライズの品質管理とパターン加工の高精度化が不可欠です。近年の微細化・高集積化トレンドに対応するため、安達新産業株式会社はより高度なスパッタリング装置やエッチング装置、フォトリソ技術を導入し、さらなる精度向上に努めています。
※1:引用文献:The Overview of Silicon Carbide Technology: Status, Challenges, Key Drivers, and Product Roadmap