問題解決

反射防止膜(マルチAR)

  • 装置の光学系や用途に応じて、どの波長域の反射率を低減すべきか悩んでいる
  • 斜め入射によって反射防止効果が変動するため、シミュレーションや試作が必要になる。
  • 基材との密着性や加工プロセス適合性の懸念がある。
  • 使用環境での耐久性・信頼性の評価が難しい。
  • 視認性を向上させ、鮮明な画質を得る方法はないか?
  • 内部反射を減らし、フレアーの発生を防ぎたい。
解決!「反射防止膜(マルチAR)」のチャート
※設計例であり、保障値ではありません。

匠のポイント

  • 光のロスを抑え、クリアな視界を~反射防止膜(AR)とは

    日常生活で窓ガラスを眺めたとき、自分の姿がうっすらと映り込む現象を経験されたことがあるでしょう。これは光が空気とガラスの屈折率差による界面で反射するために起こるものです。具体的には、ガラス表面の反射率は一般的に片面で約4%、両面で合計約8%前後となります。つまり入射した光のうち4パーセントは反射によって戻され、ガラス越しの対象物の視認性を低下させる要因となっています。

    この不要な反射を低減するために用いられるのが、反射防止膜(AR=Anti Reflection Coating)です。反射防止膜は、高屈折率材料と低屈折率材料を交互に薄膜として積層(多層コーティング)し、光の干渉効果を利用して設計されます。

    ✅層間で反射した光波同士が位相差によって打ち消し合う(干渉)ように膜厚を制御
    ✅特定の波長域で反射率を最小化し、透過率を最大化
    単層膜では1つの波長域に効果を発揮
    多層膜(マルチARコート)ではより広帯域にわたって反射を抑制可能

    たとえば、一般的な可視光用マルチARコートでは、反射率を両面合計で1%未満まで低減することも可能です。下の比較写真では、左側に反射防止膜を施したガラス、右側は未コートのガラスを示しています。反射防止膜付きの左側は表面反射が大幅に低減され、背後の商品や展示物がくっきりと見えるのに対し、右側(未コート)は表面反射が強く、視認性が大きく損なわれています。

    このように、反射防止膜はガラス・プラスチック・光学素子などの透過性能を向上させるための重要な光学薄膜技術として、ディスプレイ、カメラレンズ、センサー、医療用光学機器など幅広い分野で不可欠な役割を担っています。

  • 安達新産業の反射防止膜(マルチAR)の特徴

    可視光全域において反射を防止し高い透過率が得られます。
    ②基板表裏面による光の反射を防止します(これにより、透過率を向上させます)。 
    ③ガラスは勿論、樹脂フィルムなど多彩な基板に対応可能です。 但し、当社はバッチ式(枚葉式)ですので、大きさは□200mmがMAXサイズになります。

    ◆ご検討期間の短縮や商品の早期立ち上げの検証用として標準在庫品を準備しております。お気軽にお問い合わせください。また反射防止膜の選択ガイドも併せてご覧ください。

  • ご要望の波長帯での設計・カスタマイズが可能

    安達新産業では、ご要望の波長領域に合わせた設計・成膜(コーティング)が可能です。冒頭の特性チャートは、可視光全域の設計例ですが、それ以外の透過率も対応可能です。お気軽にお問い合わせください。

    また、基板の特性並びに、お客様の要望に合わせた設計を行います。反射防止用光学フィルターの性能を最大限に引き出すためには、基板材質や構造に応じた最適な成膜設計が欠かせません。当社では、ガラス・石英・サファイアなど多様な基板に対応し、それぞれの熱膨張係数や表面特性を考慮した薄膜設計を行っております。

  • 部品形状対応も可能

    基板調達から成膜までの一貫対応に加え、ご要望の形状へのカット・部品化にも対応可能です。形状指定の場合は、詳細図面のご提供をお願いしております。

  • 万全の品質保証体制 

    成膜から検査・梱包まで、すべての工程を必要なクリーン度を維持したクリーンルーム内で実施。膜中異物や微少欠陥への対策も万全です。すべての製品に対し、分光特性チャートを添付して出荷いたしますので、安心してご利用いただけます。

  • 安全・安心な製品設計

    当社では、人体や環境に有害な物質は一切使用しておりません。安全性にも配慮した製品設計を徹底しております。カスタム設計のARフィルターに関するご相談は、ぜひ安達新産業へ。長年の経験と実績を活かし、最適なソリューションをご提案いたします。

用途例

各種電気部品、光学機器

CCD用カバーガラス、デジタルカメラ、ビデオ、複写機テレビディスプレイ、PCディスプレイ、医療用ディスプレイ

各種検査機器

FAセンサー(光電センサ)、産業用ラインカメラ、画像検査装置、光通信用ファイバー等

車載用部品

メーターパネル、カーナビゲーションパネル、HUD(ヘッドアップディスプレイ)、車載カメラレンズ

今後の展望

従来は可視域中心の設計が主流でしたが、LiDAR、赤外センサー、バイオ・医療用光学機器など、多波長・広帯域での反射低減が強く求められています。UV〜IRまでカバーする超広帯域ARコートや、複数の波長帯を同時に制御するマルチバンド設計の開発が進むでしょう。また、スマートグラス、ウェアラブルセンサー、医療用内視鏡、フレキシブルディスプレイなど、新たな市場では小型・軽量・曲面・フレキシブル基材対応など、従来より高度なAR膜技術が必要です。反射を抑えながら高耐久性や曲面対応を両立するため、材料設計や成膜プロセスの進化が期待されます。

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