問題解決

匠のバンドパスフィルター

BPF(バンドパスフィルター)

マルチバンドパスフィルター(デュアルバンドパスフィルター)

  • 使用する光源やセンサーに合わせた帯域設定の最適化が必要。
  • 温度変化や角度依存性による波長シフトへの懸念
  • 高い透過率を確保しつつ、不要な波長をしっかりカットする設計は高度な技術を要する。
  • 複数波長を透過させる必要性に伴うコスト増設計・製造の難易度が高く、価格が上がりやすい。
  • カスタム設計の対応可否– 自社装置や用途に最適化した仕様に応じてもらえるかどうか。
解決!「マルチバンドパスフィルター(デュアルバンドパスフィルター)」のチャート
※設計例であり、保障値ではありません。

匠のポイント

  • 可視光も近赤外も、クリアに透過-マルチバンドパスフィルターとは?

    マルチバンドパスフィルター(デュアルバンドパスフィルターを含む)は、2つ以上の特定波長帯域の光のみを高効率で透過させ、それ以外の波長帯を高い遮断特性でカットするように設計された光学フィルターです。複数の誘電体薄膜をナノメートル単位で精密に多層構造として積層し、光の干渉効果を利用して透過帯域と阻止帯域を形成します。この設計により、可視光域の特定波長と近赤外域の特定波長を同時に透過させることが可能です。

    当社のフィルターは、通常のIRカット機能に加えて、850nm・905nm・940nm・1064nmなど任意の近赤外線波長だけを選択的に透過する設計を実現しています。これにより、昼夜を問わず可視光と近赤外光を利用したシステムに最適化できます。

    また、40年にわたる薄膜設計・製造技術のノウハウを活かし、急峻でシャープなカットオフ特性や、透過帯域での高い透過率角度依存性や温度変化による波長シフトの最小化を達成しています。さらに、独自の成膜制御技術により、1000時間を超える耐湿熱試験をクリアした高耐久仕様も実現しています。

  • ご要望の波長帯での設計・カスタマイズが可能

    お客様のご要望の波長領域に合わせた設計・成膜(コーティング)が可能です。透過域のみならず、阻止域での制御や入射角も重要な要素です。基板の特性並びにお客様の要望に合わせた設計を行いますので、お問い合わせ時に、基板種や波長帯をお伝え下さい。

    マルチバンドパスフィルターの性能を最大限に引き出すためには、基板材質や構造に応じた最適な成膜設計が欠かせません。当社では、ガラス・石英・サファイアなど多様な基板に対応し、それぞれの熱膨張係数や表面特性を考慮した薄膜設計を行っております。

  • 標準在庫品で開発をサポート

    ご検討中のお客様に向け、すぐに評価可能な標準在庫フィルターをご用意しています。試作・検証期間の短縮、スピーディーな製品立ち上げにぜひご活用ください。
    940nmマルチバンドパスフィルター/✅905nmマルチバンドパスフィルター/✅850nmマルチバンドパスフィルター

  • 部品形状対応も可能

    基板調達から成膜までの一貫対応に加え、ご要望の形状へのカット・部品化にも対応可能です。形状指定の場合は、詳細図面のご提供をお願いしております。

  • 万全の品質保証体制 

    成膜から検査・梱包まで、すべての工程を必要なクリーン度を維持したクリーンルーム内で実施。膜中異物や微少欠陥への対策も万全です。すべての製品に対し、分光特性チャートを添付して出荷いたしますので、安心してご利用いただけます。

  • 安全・安心な製品設計

    当社では、人体や環境に有害な物質は一切使用しておりません。安全性にも配慮した製品設計を徹底しております。カスタム設計のバンドパスフィルターに関するご相談は、ぜひ安達新産業へ。長年の経験と実績を活かし、最適なソリューションをご提案いたします。※バンドパスフィルターの選びかたガイドを見る

用途事例と今後の展望

用途例

✅セキュリティ・監視カメラ
マルチバンドパスフィルターは、昼間は可視光域(例:400~700nm)、夜間は近赤外LEDやレーザー(例:850nm・940nmなど)の波長を高透過させ、それ以外の不要な波長を遮断します。これにより、昼夜を問わず安定した高画質映像を得ることが可能になる切り替えを1枚のフィルターで同時に実現しています。

 🟦昼間:太陽光などの強い近赤外線をカット → 白飛びや画質低下を防止
 🟦夜間:赤外LED・レーザー光のみを透過 → 高感度モノクロ映像での撮影を実現

✅FA(ファクトリーオートメーション)・産業用センサー
FA機器では、製品表面の微細な傷や汚れ、材質の差異を検出するために、可視光と近赤外光の両方を用いた画像処理・センシングが一般的です。例えば、可視光(例:550nm)で外観・形状を認識させ、近赤外(例:850nm・940nm)で材質や厚みを非破壊検査といった異なる物理情報を一度に取得する役割を果たします。

✅医療・バイオイメージング
医療やライフサイエンスの分野では、複数波長の光を利用して、「組織の状態把握」「蛍光標識物質の検出」などを行います。マルチバンドパスフィルターは、特定の蛍光波長(例:520nm、590nmなど)と励起光源の波長を同時に透過/遮断制御することで、下記のような技術的課題を解決します。

 🟦蛍光イメージングのコントラスト向上
 🟦多重染色でのマルチチャンネル同時撮影
 🟦光毒性の低減と観察効率の向上

今後の展望について

高精細・高精度なセンシングシステムへの活用
AI画像処理やディープラーニング技術の発展により、カメラやセンサーには、より多様な波長情報を同時に取り込み、識別する能力が求められるようになっています。マルチバンドパスフィルターは、特定の可視光と近赤外光など複数の波長帯を選択透過することで、AIによるマルチスペクトル解析を可能にし、材質判別や異物検知、温度・水分などの状態変化検知など、従来よりも精密かつリアルタイムなセンシングを支えることができます。

✅ウェアラブル端末・小型デバイスへの組み込み
スマートグラス、ヘルスケアデバイス、AR/VRデバイスなどの小型化が進む中で、センサーやカメラもコンパクト化が不可欠です。マルチバンドパスフィルターを利用することで、可視光と近赤外光を1枚のフィルターで制御、デバイス内部の光学設計を簡素化部品点数削減と軽量化が実現でき、省電力化や装着感の向上にもつながります。特に医療やスポーツ分野でのバイタルセンシング(心拍、血流測定など)では、近赤外波長を透過させながら表面温度や色調変化を同時に検知する用途が拡大中です。

スマートシティ・防災・監視システムへの応用
街頭カメラや災害監視装置では、24時間365日安定した映像・データを取得する必要があります。日中は可視光カメラでカラー映像を取得し、夜間は近赤外LEDやレーザーを照射し、モノクロ映像で監視するという運用が一般的で、これを1台のカメラで実現するためにマルチバンドパスフィルターが活躍しています。また、AI解析と組み合わせることで、夜間の人物・車両検知や災害時の煙・炎検知など、高度な画像認識への応用も期待されています。

マルチバンドパスフィルターは、単に「複数の波長を透過する」だけではなく、高度な干渉光学設計、薄膜成膜技術、使用環境に合わせた耐久設計などを統合した先端技術の結晶です。その結果、昼夜監視、産業検査、医療解析、自動運転など、社会のあらゆるシーンで不可欠な役割を果たしています。今後もAIやセンシング技術の進展に合わせて、さらなる小型化・高性能化・多機能化が期待されています。

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