匠のミラー

金属ミラー
アルミミラー
- 反射率や膜種の仕様選定が難しい。
- 「何%の反射率が必要か」「増反射タイプ?」等、用途に合わせた適切なスペックがわからず迷う。
- 酸化や湿気による劣化、保管中の変色など、どの程度まで耐えられるのか情報不足
- 「少量だけ欲しいのにロットが大きい」「短納期対応ができない」といった供給面での制約。
- 「指定のサイズに切断できるのか」など加工の柔軟性に関する情報が不足。
解決!「アルミミラー」のチャート

匠のポイント
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可視光から近赤外まで、一枚で支える高性能反射ミラー。
アルミミラーは、ガラスや樹脂などの基板表面に高純度アルミニウム薄膜を真空蒸着やスパッタリングといった物理的気相成長(PVD)技術で成膜して作られる反射鏡です。アルミニウムは金属ミラー材として、可視光域から近赤外域(おおよそ400〜1200nm)にかけて広帯域で安定した反射率(ave:約90%以上)を示します。さらに大きな特徴として、反射特性に角度依存性がほとんどないことが挙げられます。これは、金属反射自体が材料の誘電率に基づくため、膜厚や構造に左右されず広い入射角範囲で安定した反射率を発揮するためです。
このため、入射角が大きく変化する光学系(スキャナーやプロジェクター、HUDなど)でも、反射特性をほとんど損なわずに安定して使用できるという利点があります。ただし、アルミは大気中で自然に酸化膜(Al₂O₃)を形成し、このままでは長期的に反射率が低下する恐れがあります。そこで、誘電体保護膜を追加でコーティングし、耐湿性・耐摩耗性・耐化学性を高めることも可能です。。
さらに、特定波長域での反射率を高めたい用途には、誘電体多層膜による増反射コーティング(enhanced aluminum mirror)が用いられ、可視光域で92%以上(ave)の反射率を実現することも可能です。
↑角度依存性がない反射特性を示すチャートです。
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アルミミラーの加工性と量産適性
アルミニウムは、真空蒸着やスパッタリングなどの薄膜プロセスにおいて、成膜条件の自由度が比較的高く、銀や金と比べても扱いやすい金属です。
✅膜厚制御が容易
アルミニウムは蒸発温度が比較的低く、蒸着速度のコントロール性にも優れているため、要求される膜厚(数十nm〜数百nm程度)を高精度に再現可能です。✅大面積基板への成膜が安定
物性が扱いやすいため、基板サイズが大きくても膜厚の制御(均一性)がしやすく、均質な光学特性を持つミラーを作製可能です。✅成膜速度が速い
高い蒸発効率を持ち、生産サイクルを短縮できるため、大量生産に向いています。 -
標準在庫品で開発をサポート
検討中のお客様に向け、すぐに評価可能な標準在庫フィルターをご用意しています。試作・検証期間の短縮、スピーディーな製品立ち上げにぜひご活用ください。
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部品対応も可能
基板調達から成膜までの一貫対応に加え、ご要望の形状へのカット・部品化にも対応可能です。形状指定の場合は、詳細図面のご提供をお願いしております。
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品質を支える測定と管理体制
全品、出荷時に反射特性を示す測定チャートを添付していますので、安心してご使用いただけます。また、成膜から検査に至る全工程を、適切なクリーン度を保ったクリーンルーム内で実施。微小な膜欠陥や異物混入を防ぐ体制を徹底しています。
用途と今後の展望
- 用途例
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✅赤外線・近赤外線用途(センサー・測定機器)
アルミミラーは近赤外域でも比較的高い反射率を有し、レーザー距離計、分光装置、赤外監視システムなどの反射素子として用いられます。特に波長選択性を必要としない広帯域用途に適しています。✅レーザー光学装置・測定器向けミラー
高い膜厚制御精度と耐環境性を持つ保護膜付きアルミミラーは、ビームフォーミング、光学走査、干渉計など精密用途で使用されます。角度変化の大きいスキャナー光学系でも安定した反射率を発揮し、光学系の性能安定化に寄与します。✅自動車HUD(ヘッドアップディスプレイ)
軽量かつ薄型のアルミミラーは、車載ディスプレイモジュールに組み込みやすく、曲面基板や樹脂基板への成膜も可能です。入射角変化に対する反射特性の安定性が、高精細かつ歪みの少ない映像投影を支えています。✅天文機器の補助鏡
軽量かつ大面積成膜性に優れる点から、大型望遠鏡の補助鏡や副鏡などにも利用されます。誘電体保護膜を併用することで、屋外での長期運用に耐えうる耐候性を確保しています。✅プロジェクター・ディスプレイ光学系
アルミミラーは、光源からの光を効率よく反射・導光する役割を担います。特に広帯域かつ角度依存性の少ない反射特性により、光学系の設計自由度を高め、画面の均一な輝度分布や高コントラストを実現します。
- 今後の展望
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アルミミラーは、その広帯域かつ角度依存性の少ない反射特性と、銀や金と比べて低コストで安定した量産性を備える点から、今後も多様な産業分野で不可欠な光学部材としての役割を担っていくと考えられます。特に技術面では、以下のような方向で発展が期待されています。
✅ 耐食性・耐環境性のさらなる向上
自然酸化膜の形成特性や膜構造の最適化によって、保護膜なしでも長期的に反射率を維持する技術や、大気中や高湿度環境でも性能低下を最小限に抑える成膜条件の高度化が進んでいます。✅ 大面積・自由曲面基板への成膜技術の進展
真空蒸着やスパッタリング装置の大型化・多面取り化により、曲面ミラーや大型ディスプレイモジュール向けなど、複雑形状・大面積基板でも均一な反射膜を得る技術が拡充しています。✅ 光学系への統合設計
入射角依存性が小さい特性を活かし、HUD・プロジェクター・スキャナーなど角度変化の大きい光学系においても、アルミミラー単層膜を前提とした光学設計が増加。これにより部品点数削減や軽量化を実現する動きが見られます。このように、アルミミラー単体としても、低コスト・軽量・大面積化という基本特性をさらに高めつつ、耐久性・成膜均一性・特殊形状対応といった技術革新により、従来以上に多様な製品分野での活用が期待されています。光学・車載・産業・エンターテインメントなど、次世代機器における汎用かつ重要な反射素子としての価値は、今後も高まり続けるでしょう。
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