問題解決

匠のバンドパスフィルター

可視光

可視光バンドパスフィルター 波長:633nm

  • 「レーザー波長(632.8nm)にピタリ合わせたい」等、波長特性の微調整が必要
  • 装置の構造上やフィルターの設置状況で、入射角による中心波長シフトや透過率低下が気になる。
  • 丸型・角型など、特注サイズで作りたいが、対応可能か・コストがどの程度増えるか分からない。
  • 高温多湿の現場、薬品を使う環境、長期使用による膜劣化などへの耐性を事前に確認したい。
  • 反射した光が装置内で迷光となるため、反射防止(AR)コートや低反射設計も相談したい。
  • 小ロットから量産までスムーズに対応してもらえるか知りたい。
解決!「可視光バンドパスフィルター 波長:633nm」のチャート
※設計例であり、保障値ではありません。

匠のポイント

  • 赤色レーザーを活かす精密光学フィルターの世界~633nmバンドパスフィルター

    光学フィルターの世界には、用途や目的に応じてさまざまな種類がありますが、その中でも「633nmバンドパスフィルター」は、特定の産業や研究分野で欠かせない役割を果たしています。このフィルターは、中心波長633nm(主にHe-Neレーザーの発振波長:632.8nm)付近の光のみを高効率で透過し、それ以外の波長を鋭くカット(ブロック)するように設計された光学素子です。単純に「赤い光を通す」だけでなく、数十層以上の高精度な誘電体多層膜を用いた干渉構造によって、透過帯と遮断帯をナノメートル単位で制御しているのが特長です。

  • なぜ633nmなのか?

    産業用・医療用・科学計測の分野では、He-Neレーザーが長年にわたり基準光源として利用されてきました。このレーザーは、

    ✅波長の安定性
    ✅狭い発振スペクトル幅
    ✅優れたビーム品質

    といった特徴を持ち、干渉計やラマン分光、位置決め、ホログラフィーなどに最適です。しかし、実際の測定環境では外光や蛍光、試料自体からの散乱光など、不要な波長のノイズ光が大量に存在します。633nmバンドパスフィルターは、こうしたノイズを効率よくカットし、測定系やカメラに届く信号を「純粋な633nm成分のみに限定」することで、透過効率を大幅に向上させます。

  • 技術的ポイント~高性能の裏側

    バンドパスフィルターは高い透過率(例:633nm付近で90%以上)と優れたブロッキング性能を同時に実現するために、

    🟦 誘電体多層膜(数十層~数百層)をnm単位で制御
    🟦 角度依存性や温度特性を最小化するための設計
    🟦 耐湿・耐薬品コーティングによる耐久性の向上

    など、光学薄膜設計と製造技術の粋が詰まっています。これにより、装置の小型化や高速化、高温多湿環境での安定稼働にも対応できるため、最先端の分光分析装置から、医療機器やFAセンサ、ディスプレイ用途まで幅広い応用が可能になります。

  • ご要望の波長帯での設計・カスタマイズが可能

    お客様のご要望の波長領域に合わせた設計・成膜(コーティング)が可能です。透過域のみならず、阻止域での制御や入射角も重要な要素です。基板の特性並びにお客様の要望に合わせた設計を行いますので、お問い合わせ時に、基板種や波長帯をお伝え下さい。

    633nmフィルターの性能を最大限に引き出すためには、基板材質や構造に応じた最適な成膜設計が欠かせません。当社では、ガラス・石英・サファイアなど多様な基板に対応し、それぞれの熱膨張係数や表面特性を考慮した薄膜設計を行っております。

  • 部品形状対応も可能

    基板調達から成膜までの一貫対応に加え、ご要望の形状へのカット・部品化にも対応可能です。形状指定の場合は、詳細図面のご提供をお願いしております。

  • 万全の品質保証体制 

    成膜から検査・梱包まで、すべての工程を必要なクリーン度を維持したクリーンルーム内で実施。膜中異物や微少欠陥への対策も万全です。すべての製品に対し、分光特性チャートを添付して出荷いたしますので、安心してご利用いただけます。

  • 安全・安心な製品設計

    当社では、人体や環境に有害な物質は一切使用しておりません。安全性にも配慮した製品設計を徹底しております。カスタム設計のバンドパスフィルターに関するご相談は、ぜひ安達新産業へ。長年の経験と実績を活かし、最適なソリューションをご提案いたします。※バンドパスフィルターの選びかたガイドを見る

用途例と今後の展望

用途例

🤖 FAセンサ・位置検出
製造ラインでの寸法測定・欠陥検出やロボットビジョンでは、赤色レーザーを用いて対象物の位置や形状を認識するセンサが使われます。633nmバンドパスフィルターは、その反射光や散乱光のみを選択的に透過し、工場内の蛍光灯・LED照明などによるノイズをブロックすることで、安定した検出性能を支えます。

📊 分光分析装置・ラマン分光
633nmレーザーを励起光として使用し、微弱なラマン散乱光を検出するラマン分光では、測定精度の向上が常に課題です。633nmバンドパスフィルターは、632.8nmの狭い発振帯域にピタリと合わせて透過させ、周囲光や試料からの蛍光など不要な波長成分を効率的に遮断することで、高S/N比を実現します。これにより、微量分析や新素材評価など高難度の測定にも対応できます。

🩺 医療機器(血流・酸素飽和度測定など)
血液中のヘモグロビンは可視光域の特定波長で特徴的に光を吸収します。633nmはこの吸収特性を利用し、血流量や酸素飽和度(SpO₂)を非侵襲的に測定する医療機器の光源として用いられることが多い波長帯です。633nmバンドパスフィルターを組み合わせることで、周囲照明や体表面反射によるノイズを抑え、より精度の高い測定が可能になります。

今後の展望

AI・IoT時代のセンシング精度向上
FAやロボット向けセンサでは、AI解析と組み合わせてより微細な欠陥や動きの検出が求められます。そのため、より狭帯域かつ高ブロッキング性能を持つフィルターでノイズを徹底排除し、検出系の性能を最大化する技術が重要です。

高出力レーザーへの対応
近年、ラマン分光や微細加工などで高出力レーザーの利用が増加しています。それに伴い、バンドパスフィルターにも高レーザー耐性低吸収設計が求められ、耐レーザー損傷特性を強化した多層膜設計の開発が進んでいます。

新しい光源や波長との組み合わせ
従来のHe-Neレーザーだけでなく、半導体レーザーやLEDなど新しい赤色光源との組み合わせでも、633nm付近の波長管理は引き続きニーズがあります。波長のわずかな違いを補正したり、角度依存性をさらに低減するフィルター設計の研究も進んでいます。

633nmバンドパスフィルターは、光学システム内で特定の波長の光を制御および選択的に利用するための重要なツールです。その波長帯域を調整することにより、さまざまな光学アプリケーションに適合させることができます。ご希望の仕様や用途に応じて、最適なフィルター設計をご提案いたします。どうぞお気軽にご相談ください。

関連ページ