問題解決

パターン加工、微細な配線

BPF(バンドパスフィルター)

バンドパスフィルター+LID(光学デバイス用)

  • LID本来の密閉・保護機能を損なわずに、高性能な光学特性をどう両立するか。
  • ガラス基材との密着性が不足すると膜剥離やクラックが起きるため、量産性や信頼性に影響。
  • 最終製品が過酷環境に使われる場合、光学特性を長期間維持できるか。
  • 狙った中心波長・帯域幅を高精度に実現したいが、製造バラツキや温度変動による波長ズレが不安。
  • 光学特性、寸法、公差など、製品設計に合わせた柔軟なカスタマイズが可能かどうか。
解決!「バンドパスフィルター+LID(光学デバイス用)」のチャート
※設計例であり、保障値ではありません。

匠のポイント

  • なぜガラスLIDにバンドパスフィルターが必要なのでしょうか?

    光半導体素子や光センサー、レーザーなどのデバイスは、正しく動作させるために「必要な波長の光だけを正確に取り込み、不要な波長を遮断する」ことが非常に重要です。しかし、一般的なガラスLID(パッケージ封止用カバーガラス)はあくまで物理的保護や封止を目的とした部材であり、光学的にはすべての波長をほぼ同等に透過してしまいます。これに対して、ガラスLIDにバンドパスフィルターを成膜することで、次のような技術的課題を同時に解決できます

    選択透過による透過率の向上
    例えば、近赤外レーザー光を検出するLiDARやTOFセンサーでは、特定の波長だけを透過させ、それ以外の太陽光や人工光源からの外乱光を効率的にカットできます。これによりS透過率が大幅に向上し、測距精度や感度が高まります。

    部品点数削減と小型化
    別体の光学フィルターを追加実装する場合、設計が複雑化し、装置の小型化が制限されます。一方、ガラスLIDそのものにフィルタリング機能を持たせることで、デバイスモジュールを小型・軽量化し、部品点数を減らして信頼性を高められます。

    光学特性の均一化・再現性
    成膜時に厳密に設計・管理された誘電体多層膜により、面内の光学特性が均一でバラツキが小さいフィルターを量産可能です。これにより製品ロット間での性能差を最小限に抑えることができます。

    耐久性と環境耐性
    外部に取り付けるフィルターは、振動や温度変化、湿度などでズレや破損のリスクがありますが、LID一体型フィルターは構造的に一体化しているため、機械的強度や耐環境性を高いレベルで維持できます。

    熱膨張差・応力設計による信頼性向上
    ガラス基板と多層膜の膨張率差や膜応力を考慮した設計・成膜により、長期的な使用でも膜剥離やクラックが発生しにくく、高い信頼性を保ちます。

    ガラスLIDにバンドパスフィルターを成膜することは、単なる「保護窓」から「選択的に光を通す機能性窓」へと進化させる技術です。光学特性・信頼性・設計自由度を同時に満たすことができるため、高性能化が求められる先端デバイスには不可欠な成膜ソリューションと言えます。

  • ガラスLIDの役割

    保護: 外部からの衝撃、塵埃、湿気などから光学素子を保護します。
    封止: 光学素子と外部との気密性を確保し、内部への水分侵入や汚染を防ぎます。
    固定: 光学素子を基板などに固定し、位置ずれを防ぎます。
    光学性能の向上: 反射防止コートなどを施すことで、光の透過率を高め、迷光を低減します。

    一般的にはセンサーやカメラ、レーザーなどのデバイスでよく使用され、情報通信や家電、FA関連機器、照明、医療、社会インフラ等様々な分野で使われています。当社では、従来別々の会社で処理していた誘電体多層膜メタライズを融合させ、一貫での処理加工ができる体制を整えております。

  • ご要望の波長帯での設計・カスタマイズが可能

    お客様のご要望の波長領域に合わせた設計・成膜(コーティング)が可能です。透過域のみならず、阻止域での制御や入射角も重要な要素です。基板の特性並びにお客様の要望に合わせた設計を行いますので、お問い合わせ時に、基板種や波長帯をお伝え下さい。

    バンドパスフィルターの性能を最大限に引き出すためには、基板材質や構造に応じた最適な成膜設計が欠かせません。当社では、ガラス・石英・サファイアなど多様な基板に対応し、それぞれの熱膨張係数や表面特性を考慮した薄膜設計を行っております。

  • 部品形状対応も可能

    基板調達から成膜までの一貫対応に加え、ご要望の形状へのカット・部品化にも対応可能です。形状指定の場合は、詳細図面のご提供をお願いしております。

  • 万全の品質保証体制 

    成膜から検査・梱包まで、すべての工程を必要なクリーン度を維持したクリーンルーム内で実施。膜中異物や微少欠陥への対策も万全です。赤外領域の分光特性測定が可能なFT-IR(フーリエ変換赤外分光光度計)を完備。すべての製品に対し、分光特性チャートを添付して出荷いたしますので、安心してご利用いただけます。

  • 安全・安心な製品設計

    当社では、人体や環境に有害な物質は一切使用しておりません。安全性にも配慮した製品設計を徹底しております。カスタム設計のバンドパスフィルターに関するご相談は、ぜひ安達新産業へ。長年の経験と実績を活かし、最適なソリューションをご提案いたします。※バンドパスフィルターの選びかたガイドを見る

用途例と今後の展望

用途例

🟦TO CANパッケージやセラミックパッケージの光学窓
光デバイスの保護と封止を目的としたガラスLIDに、バンドパスフィルターを直接成膜することで、内部デバイスを外乱光や不要な波長から守りつつ、必要な波長だけを効率的に取り入れることができます。センサーやレーザーダイオードのパッケージングにおいて、光学特性の均一化と高信頼性を両立できます。

🟦LiDARやTOFセンサー向け近赤外波長フィルター一体型LID
自動運転やロボティクスで広く使われるLiDARやTOFセンサーでは、近赤外レーザーの反射光だけを正確に検出する必要があります。ガラスLIDに近赤外用バンドパスフィルターを成膜することで、背景光やノイズ光を低減し、検出精度や距離分解能の向上に貢献します。

🟦医療・分析用途の蛍光検出ユニット光学カバー
蛍光分析装置や診断機器では、特定波長の励起光と発光光を高精度に分離する必要があります。バンドパスフィルター付きガラスLIDを用いることで、ユニットのコンパクト化と高S/N比を両立し、微弱光でも高精度な検出を実現します。

🟦赤外センシング・環境センサー・CO₂/NH₃ガス検出器用封止窓
ガス検知では、対象ガスの吸収特性に対応した波長のみを通すバンドパスフィルターが不可欠です。LIDに直接成膜することで、耐薬品性・耐熱性の高い構造を維持したまま、高精度な検知が可能になります。筐体設計の自由度も向上します。

今後の展望

🟦複数波長を同時に透過するマルチバンドパスフィルターのLID一体化
🟦角度依存性を低減したフィルターデザインにより、広視野センサーやAR/VR用途へ展開
🟦曲面や自由曲面LIDへの成膜による3Dパッケージ対応
🟦MEMSデバイスや量子センサー向けの超狭帯域フィルター搭載
🟦成膜技術の高度化による、さらに低損失・高耐環境性の実現

安達新産業では、用途や仕様に応じた中心波長・帯域幅・耐環境性能など、お客様のご要望に最適化したガラスLID用バンドパスフィルターを一貫して設計・成膜加工しています。部品点数削減による小型化、高精度な光学特性による検出性能の向上、長期信頼性の確保といった価値を、国内での柔軟な試作対応から量産までご提案可能です。光を選び、性能を最大限に引き出す―私たちはこれからも先進の薄膜技術を通じて、お客様のものづくりと新しい技術の未来を支えてまいります。

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