共創提案!データセンター×光学薄膜
「匠のコーティング」が描く、データセンターとの新しい接点
生成AIの急速な普及とクラウドサービスの拡大により、世界中のデータセンターは今、かつてない規模の設備投資と技術革新の渦中にあります。処理すべきデータ量は指数関数的に増加を続け、それに伴いサーバーラック当たりの発熱量、消費電力、そして通信帯域への要求は年々厳しさを増しています。従来の電気配線による信号伝送は、伝送距離が伸びるほど信号劣化や消費電力の増大という物理的な壁に直面しており、その打開策として「光」を活用した技術への期待が急速に高まっています。
光通信・光インターコネクト、光センシング、そして高効率な放熱・遮蔽構造――これらデータセンターを支える基盤技術の多くは、実は光学薄膜やそれに付随する微細パターニング加工技術と深く関わっています。私たち安達新産業株式会社は、長年にわたり光学薄膜のコーティングおよびパターニング加工に特化した「匠のコーティング」として、多様な業界のものづくりを支えてまいりました。データセンターが直面する技術課題を整理したうえで、光学薄膜技術がどのように貢献できるのか、そして私たちがどのような形で共創のパートナーになり得るのかをご紹介します。

第1章 データセンターが抱える三つの技術課題
データセンターの高性能化を阻む要因は、大きく三つに整理できます。
一つ目は、発熱と冷却の課題です。
AIワークロードの高密度化により、1ラックあたりの消費電力は数十kWに達するケースも珍しくなくなりました。発熱がサーバーの処理性能を制限する「サーマルスロットリング」の問題は年々深刻化しており、空冷から液冷への移行だけでなく、部材レベルでの放熱性能・遮熱性能の向上が求められています。
二つ目は、通信帯域と伝送距離の課題です。
ラック間・サーバー間の通信量が増大する中、従来の銅配線では高速化に伴う減衰や電磁ノイズの影響が無視できなくなってきました。そのため、光ファイバーや光インターコネクトを用いた高速・低損失な伝送への置き換えが加速しています。特に800G、1.6Tといった次世代の光トランシーバー規格に対応するためには、波長多重(WDM)技術や高精度な光学フィルタの搭載が不可欠です。
三つ目は、実装密度と信頼性の課題です。
限られたスペースに多くの光学部品・電子部品を高密度に実装する必要があるため、部品一つひとつの小型化・薄型化、そして長期的な耐久性(温湿度変化やレーザー照射への耐性)が求められます。
これら三つの課題は独立しているようで、実は密接に関連しています。通信の高速化は発熱を増やし、発熱対策のための構造変更は実装密度に影響を与える――このトレードオフの中で最適解を導くには、材料・薄膜・加工技術を横断した視点が欠かせません。それぞれの課題に対して光学薄膜技術がどのように応えられるかを見ていきます。

第2章 光通信・光インターコネクトを支える光学薄膜
データセンター内外の通信を支える光トランシーバーやアレイ導波路素子には、数多くの光学薄膜が使われています。
波長選択フィルタ(WDMフィルタ)
複数の波長の光信号を一本の光ファイバーに多重化・分離するための要となる部品です。誘電体多層膜による干渉フィルタは、特定波長のみを高い精度で透過・反射させる必要があり、膜厚の均一性や層数の制御が製品の性能を大きく左右します。要求される波長帯域が狭くなるほど、成膜プロセスにおけるナノメートル単位の精度管理が求められます。
反射防止(AR)コーティング
レンズやコリメータ、フォトダイオードの受光面など、光が通過・入射する界面では、わずかな反射でも信号のロスやノイズの原因となります。特に高速伝送では信号対雑音比(SN比)の確保が重要であり、広帯域かつ低反射率を実現するAR膜設計の重要性は年々高まっています。
ビームスプリッタやダイクロイックミラー
光路分岐・合成用の部品にも、精密な多層膜設計が用いられます。これらは光トランシーバー内部でモニタリング用光を分岐させたり、送受信の光路を分離したりする役割を担っており、データセンターの光配線アーキテクチャを支える縁の下の力持ちといえる存在です。
光通信の高速化・大容量化が進むほど、こうした光学薄膜に求められる性能――透過率、反射率、耐光性、温度安定性――のハードルは高くなります。私たちは、こうした要求に対して、材料選定から成膜条件の最適化まで一貫したご提案を行っております。

第3章 微細パターニング加工がもたらす高密度実装への貢献
光学薄膜そのものの性能に加えて、「どこに、どのような形状で膜を配置するか」というパターニング加工の精度も、データセンター向け光学部品の性能を左右する重要な要素です。
シリコンフォトニクスをはじめとする光電融合デバイスでは、基板上に多数の光導波路や光学素子が高密度に集積されます。この中で、特定領域にのみコーティングを施したり、逆に特定領域を意図的に膜のない状態に保ったりする精密なパターニングが必要になる場面が数多く存在します。例えば、光アライメント用のマーキング、電極パッドの露出部、あるいは局所的な光学特性の作り分けなどが挙げられます。
このようなパターニングには、フォトリソグラフィやマスク成膜、リフトオフといった手法が用いられますが、いずれも高いアライメント精度と再現性が求められます。特にデータセンター向け部品は量産性も重視されるため、歩留まりを確保しながら微細な加工を安定的に実現するプロセス設計が鍵となります。
また、実装密度が高まるほど、部品同士の熱的・光学的な干渉も無視できなくなります。特定エリアのみに機能性膜(遮光膜や吸収膜など)をパターニングすることで、迷光や不要な熱伝導を抑制するといった設計も可能です。私たちは光学薄膜の成膜技術とパターニング加工技術を一体的に扱ってきた強みを活かし、こうした高密度実装特有の課題に対しても、部材レベルでの解決策をご提案できると考えています。

第4章 放熱・EMIシールドなど周辺技術における光学薄膜の可能性
光信号そのものを扱う部品だけでなく、データセンターを構成する周辺部材にも光学薄膜技術が貢献できる余地は広がっています。
放熱コーティング
金属や樹脂表面に赤外線放射率の高い薄膜を形成することで、部品からの熱を効率的に外部へ放射させることができます。液冷技術の普及が進む一方で、局所的なホットスポット対策としては、こうした表面処理による放熱促進も有効な補完策となり得ます。
EMI(電磁干渉)シールド膜
高速信号を扱う配線や筐体では、電磁ノイズの漏洩・侵入を抑えるための導電性薄膜や多層シールド構造が用いられます。特に光電変換モジュール周辺では、光学系と電気系が近接して配置されるため、光学薄膜と導電膜の設計を両立させる必要が生じる場合もあるため、ますます重要性を増しています。
環境モニタリング用センサー
さらに、データセンター内のセンサー(温度、湿度、ガス漏れ検知など)にも、特定波長を選択的に透過させる光学フィルタが使用されるケースが増えています。これらのセンサーは施設の安定稼働を支える重要な要素であり、過酷な環境下でも安定した性能を発揮するための薄膜設計が求められます。
このように、データセンターを構成する部材は「光を通す・光を止める・熱を逃がす・ノイズを防ぐ」といった多様な機能を、限られたスペースの中で同時に満たす必要があります。私たちは、単一の機能だけでなく、複数の要求を組み合わせた複合的な薄膜設計のご相談にも対応しております。

まとめ ともに次世代データセンターを支える技術を
データセンターの進化は、単一の技術革新だけで成し遂げられるものではありません。――それぞれの分野の専門技術が組み合わさることで、初めて次世代の高性能・高効率なデータセンターが実現します。
光学薄膜とパターニング加工技術は、その中でも「光を精密に制御する」という切り口から、通信の高速化、実装の高密度化、そして周辺部材の高機能化に貢献できるポテンシャルを持っています。私たち安達新産業株式会社「匠のコーティング」は、これまで培ってきた薄膜設計・成膜・パターニング加工の技術力を活かし、データセンター関連の部材開発に取り組む皆様と共に、新たな価値創出に挑戦してまいりたいと考えております。
「こんな特性の膜は実現できるか」「試作段階から相談したい」といったお声がけを歓迎しております。ぜひお気軽にお問い合わせください。